鼓膜の穴は自然に塞がる?完治までの期間と難聴リスク、手術が必要になるケースとは


「耳かきで奥を突いてしまった」「大きな音がして耳が聞こえにくくなった」など、鼓膜に穴が開いてしまう「鼓膜穿孔(こまくせんこう)」は、日常のふとした瞬間に起こり得るトラブルです。

鼓膜に穴が開くと聞くと、「もう元には戻らないのでは?」「一生耳が聞こえにくくなるの?」と大きな不安を感じるかもしれません。しかし、鼓膜には非常に高い再生能力が備わっており、適切なケアを行えば多くの場合、自然に塞がります。

この記事では、鼓膜の穴が完治するまでの具体的な期間や、放置することで生じる難聴のリスク、そして手術を検討すべきケースについて詳しく解説します。


鼓膜の穴は本当に自然に塞がるのか?

結論からお伝えすると、多くの鼓膜穿孔は自然に閉鎖します。 鼓膜は厚さ約0.1ミリの非常に薄い膜ですが、皮膚などと同様に細胞が分裂して傷を治そうとする力が働いているからです。

自然治癒が期待できる条件

  • 穴のサイズが小さい: 鼓膜の面積に対して小さな穴であれば、再生しやすくなります。

  • 感染症がない: 耳だれ(膿)が出るような中耳炎を併発していないことが重要です。

  • 乾燥が保たれている: 耳の中が乾いた清潔な状態であれば、再生がスムーズに進みます。

一方で、穴が非常に大きい場合や、耳かきによる外傷ではなく、長期間続く中耳炎によって開いた穴の場合は、自然に塞がるのが難しくなることがあります。


完治までの期間はどのくらい?

鼓膜の穴が塞がるまでの期間には個人差がありますが、一般的な目安は以下の通りです。

1週間〜2週間

外傷による小さな傷であれば、数日から1週間程度で細胞の再生が始まり、痛みが引いてきます。この時期は最も感染を起こしやすいため、耳に水が入らないよう細心の注意が必要です。

1ヶ月〜3ヶ月

多くの場合、1ヶ月から3ヶ月程度で穴は完全に塞がります。この期間、定期的に耳鼻咽喉科を受診し、顕微鏡などで経過を観察することが推奨されます。


放置してはいけない「難聴」と「合併症」のリスク

「痛みがないから」と放置してしまうのは禁物です。鼓膜に穴が開いたままの状態には、いくつかの深刻なリスクが伴います。

1. 伝音難聴(でんおんなんちょう)

鼓膜は音の振動を耳の奥に伝える重要な役割を担っています。穴が開いていると振動が効率よく伝わらず、音が小さく聞こえたり、こもって聞こえたりします。

2. 慢性中耳炎への移行

鼓膜の穴を通じて細菌が中耳に入り続けると、慢性的な炎症が起こります。常に耳だれが出たり、悪臭を放ったりするようになり、聴力はさらに低下していきます。

3. 真珠腫性中耳炎(しんじゅしゅせいちゅうじえん)

稀に、穴の周囲の皮膚が中耳の方へ入り込んで増殖し、周囲の骨を溶かしてしまうことがあります。これは「真珠腫」と呼ばれ、めまいや顔面神経麻痺を引き起こす可能性もある深刻な病気です。


手術が必要になるケースとは?

数ヶ月経っても穴が塞がらない場合や、聴力の改善が見られない場合は、手術による治療を検討します。

手術を検討する目安

  • 3ヶ月以上経過しても穴が閉じない場合: 穴の縁が固まってしまい、それ以上の再生が見込めない状態です。

  • 繰り返す中耳炎: 穴があることで何度も感染を起こし、日常生活に支障が出ている場合。

  • 中等度以上の難聴: 聴力の低下が著しく、仕事や生活に影響が出ている場合。

主な手術方法

  1. 鼓膜パッチ療法: 穴に薄い膜(人工膜など)を貼り、再生の「足場」を作る外来での簡単な処置です。

  2. 鼓膜形成術: 自身の耳の周りにある筋膜などを採取し、穴を塞ぐ手術です。最近では内視鏡を用いた、体への負担が少ない術式も普及しています。

  3. 鼓室形成術: 鼓膜だけでなく、音を伝える耳小骨の再建や、中耳の炎症を根こそぎ取り除く必要がある際に行われます。


完治を早めるために、日常生活で気をつけること

鼓膜の再生を助けるためには、中耳の環境を整えることが何より大切です。

  • 耳をいじらない: 触ることで傷口を汚したり、再生しようとしている細胞を剥がしたりしてしまいます。

  • 鼻を強くかまない: 鼻をかむ圧力が耳管を通じて耳の奥にかかると、塞がろうとしている鼓膜を押し広げてしまいます。鼻をすするのも避けましょう。

  • 耳栓を活用する: お風呂やシャワーの際は、必ず耳栓やワセリンを塗った綿球を使い、浸水を防いでください。


まとめ:早期発見と定期的な観察がカギ

鼓膜に穴が開いても、決して絶望する必要はありません。多くの場合、人間の体は自らの力でその穴を修復しようとします。

しかし、その再生を助けるためには、専門医による正しい診断と、適切な保護が欠かせません。「自然に治るだろう」と過信して放置せず、聞こえの違和感や痛みがあるときは、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。

完治までの数ヶ月間、根気よく耳をいたわってあげることで、あなたの耳は再び元通りの音を届けてくれるようになります。

次回の診診時に医師としっかり話し合い、自分に最適な治療プランを見つけましょう。



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