なぜ亡くなった人は「白い着物」を着るのか?仏教の教えと経帷子に込められた願い
お葬式の際、故人が身にまとう真っ白な装束。この白い着物は正式には「経帷子(きょうかたびら)」と呼ばれます。
「なぜ葬儀では白なのか?」「普段の着物と何が違うのか?」といった疑問を持つ方は多いでしょう。実は、この白い色には仏教の深い教えと、残された家族の切実な願いが込められています。
この記事では、死装束が白である理由、経帷子が持つ宗教的な意味、そして現代の葬儀における役割について詳しく解説します。
理由1:仏の弟子として「清浄」な姿で旅立つため
仏教において「白」は、汚れのない**「清浄(しょうじょう)」**を象徴する色です。
亡くなった方は、この世での修行を終え、仏様の世界(極楽浄土)へと旅立ちます。その際、現世での煩悩や罪をすべて洗い流し、真っ白で清らかな心身で仏の弟子となることを意味しています。
経帷子は「修行僧」の格好
実は、死装束の構成は修行僧の旅支度そのものです。
白衣(びゃくえ): 清浄な心を表す
編笠・金剛杖: 厳しい道のりを歩むための装備
頭陀袋(ずだぶくろ): 六文銭(三途の川の渡し賃)を入れる
故人が無事に険しい冥土の旅を乗り越え、悟りの境地に辿り着けるようにという「願い」が、この白い装束に込められているのです。
理由2:お遍路と同じ「死への覚悟」の象徴
四国八十八ヶ所巡礼などを行う「お遍路さん」も、同じように白い装束(白衣)を着用します。これには**「同行二人(どうぎょうににん)」**という考え方があります。
「修行中にいつどこで命が尽きても、そのまま仏様のもとへ旅立てるように」という覚悟を持って白を着るのです。死装束が白なのは、この修行者の精神を受け継ぎ、亡くなった方を「人生という長い修行を終えた旅人」として送り出すためでもあります。
経帷子(きょうかたびら)に隠された驚きの役割
「経帷子」という名前の通り、かつてはこの白い着物に直接「お経」が書き込まれていました。
お経を身にまとう「守護」の意味
現代では無地のものや、宝印(御朱印)が押されたものが一般的ですが、本来は**「お経の功徳で故人を守る」**という魔除けや加護の意味がありました。
名号の書き込み: 「南無阿弥陀仏」などの文字を記す
朱印の力: 巡礼地で集めた御朱印がある白衣は、最高の功徳を持つ死装束とされます
家族が故人のために一文字ずつお経を書き写した経帷子は、あの世への「最強の通行手形」になると信じられていたのです。
現代の葬儀:白以外の「死装束」を選ぶケースも
伝統的な白い経帷子は今も主流ですが、最近では「その人らしさ」を尊重する新しい形も増えています。
お気に入りの服(エンディングドレス)
「最期は自分らしい格好で」という本人の希望や遺族の想いから、生前愛用していたスーツ、着物、華やかなドレスを死装束として選ぶ方が増えています。
和装の場合: たとえ色付きの着物であっても、着せ方は伝統に則り「左前」にすることが多いです。
重ね着の工夫: 好きな服を着せた上で、その上から白い経帷子を「掛け布団」のようにふわりと掛けてあげる形式も一般的です。
宗派による違いに注意
浄土真宗のように「亡くなればすぐに仏になる」という教えの宗派では、本来「旅支度」としての経帷子は必要ないとされます。しかし、地域の習慣として白い服を用意することも多いため、迷った際は菩提寺や葬儀社に相談するのが安心です。
まとめ:白は「家族の愛」の色
なぜ亡くなった人は白い着物を着るのか。その答えは、単なるマナーや慣習ではなく、**「どうか迷わず、清らかな姿で幸せな世界へ行ってほしい」**という残された人々の祈りにあります。
経帷子の白は、旅立つ人への敬意であり、私たちができる最後の手向け(たむけ)なのです。
もし、ご家族の終活やご自身の最期について考える機会があれば、この「白い装束」に込められた意味を思い出してみてください。それは決して悲しいだけのものではなく、新しい旅立ちを祝うための大切な準備であることがわかるはずです。
死装束の準備だけでなく、一緒に棺に入れる「副葬品(思い出の品)」についても、今のうちに考えておきませんか?