葬儀前に亡くなった方のご自宅へ訪問する際のマナー:服装・香典・言葉遣いを徹底解説


大切な方が亡くなったという知らせを受け、葬儀(通夜・告別式)を待たずにご自宅へ駆けつけたいと考えるのは、深い哀悼の意の表れです。しかし、葬儀前の御遺族は、悲しみの中で慌ただしく準備を進めておられる時期でもあります。

ご自宅を訪問する際は、普段の弔問とは異なる「葬儀前ならではの作法」が必要です。御遺族の負担にならず、失礼のない形でお悔やみを伝えるためのマナーを詳しく解説します。


1. 葬儀前に弔問しても良いケースとは?

まず確認したいのが「今すぐ訪問しても良いかどうか」という点です。葬儀前の弔問は、本来、故人と特に親しかった方や近親者に限るのが一般的です。

  • 親しい間柄の場合: すぐに駆けつけて、何か手伝えることがないか確認します。

  • 知人・仕事関係の場合: 原則として、通夜や告別式に参列するのがマナーです。どうしても葬儀に参列できず、事前に伺いたい場合は、必ず御遺族の都合を確認してからにしましょう。

最近では、家族葬の増加や感染症対策の観点から、自宅への弔問を辞退されているケースもあります。連絡を入れた際に「お気持ちだけ頂戴します」と言われた場合は、無理に訪問せず、後日お悔やみの手紙や供花を送るのが賢明です。


2. 訪問時の服装:礼服は避けるのがマナー

葬儀前の弔問で最も注意したいのが「服装」です。

  • 「取り急ぎ駆けつけた」形をとる: まるで不幸を予期していたかのように見えるため、礼服(喪服)を着用してはいけません。

  • 地味な平服(普段着)で: 派手な色や柄、露出の多い服を避け、紺・黒・グレーなどの落ち着いた平服を選びます。男性なら地味なスーツやジャケット、女性ならワンピースやアンサンブルが適しています。

  • 殺生を連想させるものはNG: 毛皮や革製品(ヘビ革など)、派手なアクセサリーは外してから訪問しましょう。


3. 香典や供物、お花はどうする?

葬儀前の弔問では、お金や品物をどう扱うべきか迷うポイントです。

香典は持参しないのが基本

葬儀前に香典を渡すのは「不幸を待っていた」と捉えられる可能性があるため、控えましょう。香典は通夜や告別式の際に持参します。もし、どうしても葬儀に参列できない事情がある場合は、後日あらためて「御霊前」や「御仏前」としてお渡しするのが正式です。

枕花(まくらばな)を送る場合

故人の枕元に飾る「枕花」を持参、あるいは手配するのは良いとされています。その際は、白を基調とした落ち着いた花を選びます。ただし、家の中が片付いていない場合もあるため、事前に「お花をお持ちしてもよろしいでしょうか」と一言確認するのが親切です。


4. 御遺族にかける言葉と滞在時間

悲しみの真っ只中にいる御遺族に対しては、言葉少なに、短時間で切り上げるのが最大の配慮です。

お悔やみの言葉(例)

  • 「この度は、突然のことで言葉もございません。心よりお悔やみ申し上げます。」

  • 「お力落としのこととお察しいたします。何か私にお手伝いできることがあれば、遠慮なくおっしゃってください。」

※「度々」「重ね重ね」「死んだ」などの忌み言葉や、死因を詳しく尋ねることは絶対に避けてください。

滞在時間の目安

玄関先でお悔やみを述べて辞去するのが基本です。御遺族から「中にどうぞ」と勧められた場合のみ上がらせていただきますが、長居は禁物です。10分〜15分程度を目安に退室しましょう。


5. 対面を希望された場合の作法

御遺族から「顔を見てやってください」と勧められた場合は、以下の手順で対面します。

  1. 枕元より少し下がった位置で正座し、両手を突いて一礼する。

  2. 御遺族が白布を外してくださるまで待つ(自分でめくってはいけません)。

  3. 故人に深く一礼し、合掌する。

  4. 少し下がり、御遺族に「穏やかなお顔ですね」といった短い挨拶をして一礼する。

もし、対面するのが辛い場合は無理をする必要はありません。「お顔を拝見するのは、あまりに辛いので……」と丁寧にお断りしても失礼にはあたりません。


まとめ

葬儀前の自宅訪問は、何よりも**「御遺族の心に寄り添うこと」**が最優先です。

  • 服装は「落ち着いた平服」で。

  • 香典は持参せず、通夜・告別式まで待つ。

  • 御遺族の負担を考え、長居はしない。

これらのマナーを守ることで、故人への敬意と御遺族への思いやりが正しく伝わります。形式にこだわりすぎず、静かにお別れを惜しむ気持ちを大切にしてください。