駐車場の当て逃げ「気づかなかった」は通用する?後日発覚した際の正しい対処法


買い物から戻って愛車を見たら、身に覚えのない傷や凹みが……。あるいは、帰宅後に自分の車に擦ったような跡を見つけ、「もしかして、あの時?」と血の気が引く思いをしたことはありませんか?

駐車場の当て逃げは、非常に多いトラブルの一つです。中には、本当に衝撃が小さく、車内では「気づかなかった」というケースも少なくありません。しかし、気づかなかったからといって放置してしまうと、後から大きな社会的リスクや法的ペナルティを背負う可能性があります。

この記事では、駐車場での当て逃げについて「気づかなかった」場合の法的な扱いから、後日気づいた時に取るべき誠実な対処法まで、詳しく解説します。


1. 「気づかなかった」としても、当て逃げは成立するのか?

結論から言うと、**「故意に逃げた(認識があった)」か「本当に気づかなかったか」**で、法的な扱いは大きく異なります。

認識があった場合(当て逃げ)

ぶつけた自覚があるのに警察に届けずその場を立ち去ると、「当て逃げ」とみなされます。これは道路交通法違反となり、以下のペナルティが課される可能性があります。

  • 安全運転管理義務違反: 違反点数2点

  • 危険防止措置義務違反: 違反点数5点

  • 合計: 7点(一発で免許停止処分の対象)

本当に気づかなかった場合

物理的な衝撃が極めて小さく、音や振動を感じなかった場合、法律上の「逃げた(故意)」という要件を満たさないため、直ちに刑罰の対象になることは稀です。ただし、後日被害者や警察から特定された際、「気づかなかった」という主張を客観的に証明するのは非常に難しいのが現実です。


2. 「後で気づいた」ときに絶対にやってはいけないこと

自分の車に付いた傷を見て、「あの駐車場の時だ……」と気づいた瞬間、焦って以下のような行動を取るのは厳禁です。

  1. 傷をすぐに修理・塗装する: 証拠隠滅と疑われ、悪質だと判断されるリスクが高まります。

  2. そのまま放置する: 最近の駐車場は防犯カメラの精度が非常に高く、ドライブレコーダー(駐車監視モード)も普及しています。警察からの連絡を待つだけの状態は、精神的にも追い詰められます。

  3. 現場にこっそり戻る: 警察を通さずに解決しようとすると、後々「脅迫」や「不当な賠償請求」などのトラブルに発展する危険があります。


3. 【正解】後から気づいた時の「3ステップ対処法」

「気づかなかった」としても、気づいた時点で迅速に行動することが、自分の身を守り、相手への誠意を示す唯一の方法です。

ステップ1:すぐに最寄りの警察署へ連絡

「〇月〇日の〇時頃、〇〇の駐車場で、もしかしたら他人の車に接触したかもしれない」と自ら申し出ましょう。

  • メリット: 自首扱いとなるため、悪質な「逃走」とみなされず、点数の加算(行政処分)や罰則を免れる、あるいは軽減される可能性が非常に高くなります。

ステップ2:保険会社へ連絡を入れる

警察への届け出と並行して、自動車保険(任意保険)の担当者に連絡します。

  • 物損事故の扱い: 相手の車の修理代は対物賠償保険でカバーできます。「気づかなかった」という経緯も正直に話しておきましょう。

ステップ3:店舗(駐車場管理者)への連絡

スーパーや商業施設の駐車場だった場合、施設側にも連絡を入れます。被害者から施設に問い合わせが入っている場合があり、スムーズな解決に繋がります。


4. なぜ「気づかない」ことがあるのか?

「気づかないはずがない」と責められることもありますが、以下の状況下では実際に気づかないケースが存在します。

  • 大型車やSUVに乗っている: 車体が重く頑丈なため、軽自動車や障害物との軽い接触を吸収してしまうことがあります。

  • 風が強い、雨が降っている: 外音によって接触音がかき消されることがあります。

  • 段差や轍(わだち)があった: 走行中の揺れと接触の振動を混同してしまうことがあります。


5. 当て逃げの加害者にならないための予防策

「気づかなかった」という悲劇を防ぐために、今日からできる対策です。

  • ドライブレコーダーを「駐車監視モード」にする: 自分の衝撃だけでなく、相手から当てられた際の証拠にもなります。

  • 駐車後の「一回りチェック」を習慣に: 車を降りる際や戻った際に、軽く車体を一周見て回るだけで、異変にすぐ気づけます。

  • 隣の車のナンバーを意識する: 面倒ですが、狭い駐車場では有効な自衛手段です。


まとめ:誠実な対応が、最悪の事態を防ぐ

駐車場での接触は誰にでも起こりうるミスです。大切なのは、**「気づいた瞬間にどう動くか」**です。

「気づかなかった」という事実は、警察や保険会社に正直に話せば、多くの場合は物損事故として冷静に処理されます。一番のリスクは、特定されるまで沈黙を守り、後日「逃亡犯」として警察から連絡が来ることです。

もし今、不安で押しつぶされそうなら、まずは警察に一本の電話を入れてください。それが、あなたと相手の双方にとって、最も平穏な解決への道となります。